教室ニュース 水橋校ニュース「子どもとの関わり方ー失敗と成長」

「子どもとの関わり方ー失敗と成長」

「子どもとの関わり方ー失敗と成長」
 子どもたちは皆それぞれに、胸に抱いた希望や夢を心の栄養にして、日々成長してゆきます。
 希望や夢にもいろいろあります。親しい友だちにだけそっと打ち明けられるものもあれば、まわりの皆に堂々と公言されるもの、また本人の心の奥深くにひっそりとしまわれているものもあるでしょう。子どもに限らず、人は誰でも、希望や夢を育てながら、辛いこと苦しいことも決して少なくない日々の暮らしを懸命に続けているのだと思います。
 ちょっと冷静になって振り返ってみれば分かることですが、どんな大人も、ここに来るまでには、さまざまな失敗の経験を重ねてきたはずです。普通の大人であれば、人には言えないような失敗も、1つや2つではなかったはずです。
 偉そうなことを言うようで恐縮ですが、人というものの地力を作り上げるのは、さまざまな失敗の数々ではないかと思います。
 失敗したくない、どこまでもつまずくことなくスムーズに進んでゆけたらどんなにいいだろうと思われる方もおられるかもしれません。しかし私はまったくそうは思いません。失敗のない人生など、それこそはかない夢でしかなく、幻と言ったほうがよいでしょう。実際の人生は、一筋縄ではゆかない失敗の連続であり、そうした苦い経験を数多くくぐり抜けることで、初めて人は人間らしくなってゆくのだと思います。
 失敗を恐れる気持ちは確かに誰にもあります。しかしそういう気持ちに引きずられていると、およそ成長や進歩から見放されてしまうことになるでしょう。親御さんのなかには、我が子が失敗するのを嫌われる方もおられるかもしれません。そうした態度は子供にも影響します。成長途上の小さな心のなかに、失敗することに対する拒絶心が芽生えてくるとしたら、これはたいへんに厄介なことです。
 生涯に数多くの発明をしたあの発明王エジソンは、あるとき取材を受け、これまで数多くの失敗に悩まれたこともあったでしょうと言われ、「私は失敗に悩んだことなどなかった。そうした経験は1つ残らず成功するための土台ともなり柱ともなった」と答え、失敗というものにつきもののネガティヴな見方をばっさりと切り捨てたそうです。おそらく伝記につきものの誇張もあるでしょうが、ここで言われていることは、すべての人に当てはまる真実であると思えます。
 私は、子どもたちには、失敗を恐れず未知のものに挑戦する大きな気持ちを持ってもらいたいと念じています。学業においても同じことです。学業は、決められたことを決められた方法に従ってただなぞるだけのものではありません。もちろんそういう側面もありますが、そして小学校から高校まで、日本の教育はそういう側面をあまりにも強調しすぎていると思いますが、学業の核心は、未知なるものの発見とその喜びに他なりません。
 目先の学校のテスト結果に目と心を奪われるあまり、勉強が臆病な小さくこわばったものになっている子を見かけることがあります。また自分には複雑な概念を理解する能力がないと決めてかかり、勉強と言えば暗記することにしか気持ちが向かない子もいます。そういう子を見ていると、ああこの子はきっとこれまでさまざまな場所で失敗をとがめられることが多かったに違いないと心底気の毒になります。人の能力というものは、自分自身にもまわりの人びとにも決してはっきりとは分からないものです。そうしたものに対しては、何より謙虚な気持ちを持つ必要があります。
 私の仕事は、子どもたちの勉強に対する抵抗感を取り除くことだと思っています。それはつまり、子どもたちから失敗を恐れる気持ちを取り除くことです。私の教室では、子どもたちは間違えたからといって、叱られたり恥ずかしい思いをしたりすることはありません。少なくとも、そんな思いはさせまいと私は強く心がけています。教室で子どもたちに刺激的で前向きな経験をさせてやりたいと思っています。
 子どもたちの心のなかに勉強を楽しむ気持ちを芽生えさせること。これができれば、後はまわりの大人が特に何もしなくても、面白いように事は運んで行くものです。その結果として、当然成績も向上します。成績向上が先か勉強を楽しむ気持ちが先かと問われれば、私は迷うことなく勉強を楽しむ気持ちが先と答えます。無理やり勉強させられて、塗炭の苦しみを味わったあと成績が向上したとしても、人はもう2度とそんな苦しみを味わいたいとは思わないでしょう。そういう勉強は決して長続きしませんし、人の地力を作り上げるものではないと思います。
 学業は、ほとんどの希望や夢を実現するうえで欠かすことのできないものです。夢を育てることと勉強を楽しめるようになることは切っても切れない関係にあると思います。我々大人は、子どもたちを絶望させることだけは断じてしてはなりません。そしてそれは、我々大人にとって、決して簡単なことではないと思います。
水橋校 涌井 秀人